人は、歳月を重ねるたび古いものに愛着を感じたり、
遠い昔を思い その回想にひたる時間が長くなる気がする。
2006年を振り返って、何が一番心に残っているか自分に問いかけてみると
長野県小布施の岩松院で初めて見た北斎の肉筆「八方にらみの鳳凰図」や
青森のねぶた製作現場など、好奇心を突き動かされる強烈な個性を
つきつけられたものの、やっぱり衣スタッフと分け合ったささやかな感動の
“事件”の方が大きい気がする。
2006年、衣のメンバーの中にめでたく二組の夫婦が生まれた。
順序を踏み、華燭の宴を催し、ご両親や仲間に盛大に祝福された一組に比べ、
もう一組はおそろいの指輪を買い、こっそりと籍を入れ 晴れて夫婦になった
対照的な二組だった。
好きならば、形や形式はどうあれ 寄り添えるだけで幸せ・・・。
それは大いに素晴らしいと思うのだけれど、
「結婚式をしよう!」
と、思い立って号令をかけた。
・・・・この号令に、愛すべきスタッフの動きの早いこと!早いこと!
ドレスはもとより、音楽、料理、花、すべての段取りが整い、新郎一人を
村八分にして、水面下で作戦は隠密のごとく進められた。
(仕事もその速さと機転で動けたら・・・と横目で見てしまう私など気にする余地もなく・・・)
当日、何も知らない新郎は 工房に来るなり、男性スタッフに目隠しをされ、
拉致状態のまま着替えさせられ・・手をひかれ席に着いた。
目隠しを取られた所に、ウエディングマーチとスタッフの拍手の中
新婦登場・・・
顔面蒼白で固まった彼の顔が今でも忘れられない。
頭の中が、☆$£ё*Ω♪∽・・・・になっていたのだろう。
お金をかけた訳でもなく、真新しいドレスでもなかったけれど、
みんなの心のこもったあたたかい結婚式で、泣き通しだった新婦に
もらい泣きしたスタッフも少なくなかった。
人間は機械と違って、一定の能力が連続して発揮できない悲しさがある。
休息や気分転換はとても大切な句読点だと思う。
それが、笑いの慰安であったり、感動の涙であったりするのだろうと思う。
そしてそれが、人生の危機が連続して押し寄せたような時、不思議な力を出して
取り除いてくれるものだと信じている。
2007年、私は今年もこの衣スタッフ達と一緒に年を重ねられる事を、
とても幸せだと思う。